プロローグ 葛藤

 

「俺、ちゃんと親父のラーメン屋を守るよ」

 

 

拉麺太郎は、亡き父を想いながら
仏壇の前で手を合わせる。

個人経営のラーメン屋を営んでいた
彼の父親は5年前に他界し、

現在は拉麺太郎と母親の二人で
店舗の経営を引き継いでいる。

 

しかし、高校を卒業した直後から店で
ラーメンを作り続けている拉麺太郎には
迷いが生まれていた。

 


本当にこのままでいいのだろうか。

 

彼に初めて料理を教えてくれた父親は、
彼よりも遥かに料理の腕が優れていた。

 

初めて教わった料理は中華スープや杏仁豆腐など、
小学校低学年の彼には難しい料理だった。


案の定彼は料理で失敗をしたが、
父親は「美味しいじゃないか」と誉めてくれた。

だからこそ、
拉麺太郎は父親の後を追いたいと思ったのだ。

 

 

でも、俺が店を継ぐのは早すぎたよ。
本当は、お客さんも親父のラーメンを
食べたいはずなんだ。

 

 

彼は消えそうな声で本音を口にする。

23歳となった現在、
毎日続く単調な日々に飽きかけていた。


おまけに彼の目標であった父親はもういない。

 

彼が作ったラーメンの味見をして、
自分に感想を聞かせてくれることもない。

 

途端に虚しさを感じた拉麺太郎に

「自分では父親を越えることは出来ないだろう」
「本当に努力の甲斐があったのか」

などの感情が溢れてきた。

 

 

努力を積み重ねて父親より美味しい料理を作り
お客様を笑顔にしたい。

けれども、生前の父親が言っていた

 

 

"ラーメン屋はお客様に飽きられるわけにはいかない
毎日通うお客様がいてくれるよう、
驚きと親しみのある品を提供し続けることが必要だ"

 

 

という言葉さえ、今は皮肉に思えてしまう。

 

どうしようもない空虚感に苛まれた彼は
重たい足取りで厨房へ向かい、
定休日にも関わらず調理器具を眺めていた。

今のままでは、
お客様に飽きられるラーメンしか
作れないかもしれない。

 

 

自分は視野が狭すぎる。

 

 

そう思った時、ふと「他の店で料理を食べてみよう」という考えがよぎった。彼は目覚めたばかりの母親に「夕方までには帰るから」と告げて足早に店を出る。彼は、そのまま料理店が立ち並ぶ大路地へと消えていった――。

 

 

ラーメン屋の息子フランス料理と出会う

拉麺太郎が様々な料理店を眺めていると、
煌びやかな装飾が施された
カフェテラス付のフランス料理店に目が留まった。

 

ガラス窓の向こう側にオープンキッチンがあり、
料理を作る工程を観察できる。

ラーメン屋で見たことも無い調理器具や食材、
調理法など興味をそそる部分が数多くあった。

斬新で魅力的な料理法。


フレンチの華やかさが散りばめられた皿が、

スタッフによって手際よく客席へ運ばれていく。
チーズや牛乳に近い香りが
わずかに拉麺太郎の鼻をくすぐった。


カフェテラスで食事を摂る女性客のテーブルには、

フランスパンを輪切りにしたものと
グラタンらしき一品が並べられている。

 

店内とカフェテラスを見比べると、
子どもも食べやすい軽い食事と、
どっしりしたボリュームのあるメニューの
両方があることがぱっと見で感じられる。

 

メニューに多様性と工夫がありそうだ。
この店で食べてみたい。

 

そう考えた拉麺太郎は、
フランス料理店のドアを開けた。

 

 

 

「美味しい!!初めて食べるのに安心感がある!!」

 

料理店に入り、
拉麺太郎が頼んだメニューは
牛フィレ肉のステーキとガーリックトーストだった。

程よく焼かれた食欲をそそる牛肉の香りと、
適度なにんにくの香りが鼻孔をくすぐる。

さらにステーキの上には“フォアグラ”という
見たこともない食材が添えられており、
輝かしいソースや鮮度の良い野菜を含め、
皿全体が華やかに見える。

 

味の調和が取られていて
脂っこさを感じさせない上品な印象を与える料理に、

拉麺太郎は食べるたびに
驚愕しながら舌鼓を打っていった。

 

 

「こんにちは。
突然声をかけてすみません。

お店に入る前から、
あなたはフレンチにかなり興味があったようだけど、
もしかしてフレンチが好きなのかい?」

 

 

料理を食べ終えて
余韻に浸っていた拉麺太郎に声をかけてきたのは、
この店のシェフを務める人物であった。

彼は話し方が柔らかく
気さくな店主といった印象を持っている。

拉麺太郎がこの店に来るまでの経緯を語ると、
シェフは朗らかに笑いながら言う。

 

「それなら、うちでフレンチを学んでみるかい?」

 

「教えてもらいたいです!
でも俺は店を継いでいるし、
親父の意思やレシピを残していきたいから
フレンチを学んだとしても…」

 

「フレンチの技術を“使う場所がない“と
言いたいのかい?それなら――」

 

シェフは言いかけた後、
とあるポップアップレストランの広告
持ってきて拉麺太郎の前にかざした。

 

「こういう方法もある。1日限りだけどね。
それに、料理は無限大に広がる草原のようなものだ。

他の料理の技術も学ぶことで、
今よりもっと美味しい料理が作れるようになる」

 

拉麺太郎はシェフの提案に目を輝かせた。
気さくなシェフがフレンチの技術を教えてくれる。
奇跡に近い上に有難いことじゃないか。

 

せっかくのチャンスを逃さまいと考えた彼は、


その日から半年かけて、

ラーメン屋の定休日にフランス料理の作り方を
教えてもらうこととなった。

 

 

半年後

 

 

「本当に何から何まで、お世話になりました!
ありがとうございました!」

 

 

フレンチの修行を終えた拉麺太郎。
涙をこぼしながらシェフに頭を下げると、

彼は優しい笑顔を浮かべながら
拉麺太郎の頭を撫でた。

 

 

「また困ったことがあったらいつでもおいで」

 

 

彼はまるで、父親のような優しさがある。

 

シェフに父親と同じ空気を感じ取った拉麺太郎は
はにかみながら宣言した。

 

「でもやっぱり、親父から引き継いだ
ラーメン屋のレシピや意思はそのまま残したいので、
ポップアップレストランで
フレンチの技術を使わせてもらいます!」

 

「それでも構わないよ。
君の努力は必ずどこかで実を結ぶと
信じているから」

 

 

「ありがとうございます。
ところで、シェフが俺に
フレンチを教えてくれたのはなぜですか?
フレンチとは無縁のラーメン屋の息子なのに」

 

 

「君が、自分のためではなく誰かのために
料理を作ろうとする
素晴らしい料理人に見えたからね。

それに料理で多くの人を幸せにしたいという気持ちを
僕は忘れていた。

 

初めて会った時、
君の志と熱意に感動して応援したいと思った」

 

 

シェフが言い終えた時、
自然と彼らの瞳から涙がこぼれていた。

お互いに欠けていた感情を、
半年間で補えたのかもしれない。

 

料理の可能性は無限大であり、
より多くの人を幸せにして平和を届けるためにある。

 

また、自分ではなく誰かのために努力を重ねて、
料理を作ることで最高の一品を提供できる。
お客様に料理を食べてもらって、
一人でも多くの人に幸せを届けよう。

 

そう決意した拉麺太郎はシェフとの別れを告げた後、
以前よりも熱心にラーメン屋を切り盛りしながら、


忙しい合間を縫って

1日限りのポップアップレストランで
提供する料理の試作を始めたのだった――。


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最後までご覧頂きありがとうございました!

 

 

■日時
11/29 17時~21時
(人数によっては2部制に分けるかもしれない旨ご了承ください)

■場所
アートアトリエ東京(外壁にCafe Tokyoの記載有)
東京都墨田区業平1丁目10−8 2F
*半蔵門線・都営浅草線 押上駅から徒歩約5分
*とうきょうスカイツリー駅から253m

■人数
20人(予定)

※席間隔を開けてご用意します。

■イベント概要
フランス料理に憧れを抱く
ラーメン屋息子の「拉麺太郎」(架空の人物)が
一夜限りの「ラーメンフレンチ」を振る舞うポップアップレストラン。

街中華の古き良き懐かしいメニューを
フランス料理の技法を用いてアレンジした
「ラーメンフレンチ」をご提供します。

■料理内容
ラーメンフレンチコース 1人4500円
<内容>
・前菜 2~3品
・ラーメン 1品
・デザート 1品
※ラーメンの食べ応えによって品数調整します。

ビールや自家製ドリンクなど
ラーメンフレンチがすすむ飲み物をご用意する予定です。

■決済
・入場料は事前カード決済をお願いします。
フォーム入力後決済確認した後、入場ができるようになります。
(当日決済は原則出来ないのでご了承ください)

・ドリンクなど当日追加で召し上がるものに関しては
完全キャッシュレス決済になります(クレジットカード/ICカード決済)

 

 

このご時世ですので対策をしっかり行ったうえで
出来る限り楽しんで頂けるよう尽力する所存です。

みなさまにお会いできることを心より楽しみにしています。